ボイラー等の燃焼機器によって間接的に加熱・冷却する熱媒体を不凍液(空調業界では特にブライン)と呼びます。ブラインは和訳すると、
"海水=brine"の意味があり、古くは無機ブラインと呼ばれる塩化カルシウムや塩化ナトリウムといったものを熱媒体として利用していた事に由来していると言われています。
しかし、これらは金属等に対して腐食性が強く、またスケール等の影響で機器性能の低下を招き、機器の維持管理コストが高くつくために、現在ではグリコールを主成分とした有機ブラインが一般的となっています。
有機ブラインは防食性に優れ、腐食に対する影響が少なく、取り扱いが容易な事から、現在では様々な分野で使用されています。(当店で扱っている製品は全て有機ブラインです)
確かに水でも短期的には熱媒体としての役割は果たすでしょう。しかし、水を長期間温め続けると一体どうなるでしょうか? 蒸発して水量が減ったり、場合によっては藻等の微生物が発生するでしょう。水量が減ると配管中にエアー(空気)が混入し、配管が詰まったり、音鳴の原因や空焚きの危険がございます。
また微生物が発生すると、配管が詰まったり、不凍液を配管に送り出す人間に例えると心臓の役割を行っているポンプの故障の原因となりますので、暖房配管には専用の不凍液(ブライン)を使用する事を当店では強くお勧めいたしております。
グリコール系不凍液(ブライン)には、防食剤(インヒビター)が適切に添加されており、微生物の発生・繁殖や、金属腐食によるpHの急激な変化を効果的に抑制します。この防食剤(インヒビター)の選定が各社の積み重ねたノウハウであり企業秘密なのです。
新品のシステム以外に投入した場合には、
製品的な保証は対象外とさせていただいております。実際の現場の事例として異種不凍液(ブライン)同士の混合が原因であると考えられるトラブルについては、私は20年間聞いたことがありません。
しかし化学薬品である以上、何かしらの組み合わせや環境によっては、混合が原因となる性能の低下を招く可能性がゼロではありません。必ず
混合についてはお客様の自己判断で作業を行っていただけますようお願いします。(最低でも主成分は同じものを選んだほうが良いでしょう)
また、汚れた不凍液(ブライン)に新液を投入しても、汚れた液が薄まるだけで決して性能はフルに発揮できませんので、基本的に配管洗浄後に不凍液(ブライン)を全量入れ替える事を当店ではお勧めいたしております。
不凍液(ブライン)の主成分であるグリコールは、本来
無色透明の液体です。これに製造メーカーがそれぞれの製品同士の区別や、また水との区別の為に色素を添加(着色)しています。つまり、同じような色でもメーカーによって主成分や設定濃度等が異なる場合がありますので注意が必要です。
逆を言えと、実際の現場では同等製品でも色だけが異なる場合が多いでしょう。あくまでも製品を選ぶ基準は、用途や主成分、また設定濃度で判断すると間違えが無いでしょう。
グリコール系の不凍液(ブライン)には、現在大きく分けて2種類が市場に流通しています。極端な説明をするとどちらも防食性のある熱媒体として同じ役割をしますので、「絶対に使用する事ができない」といった事は極めて稀ですが、その特長により一般的にはプロは以下のように使い分けています。(機器メーカーの推奨と異なる場合には、必ずメーカーの指示に従ってください)
プロピレングリコール系プロピレンは食品の防腐剤にも利用されているように、食品添加物ベースの非常に安全なグリコールです。エチレンと比較すると若干高価ではありますが、
毒性が極めて低く、粘度が高いことが特長です。よって、システムの配管が短く生活空間に近い、セントラル暖房配管や床暖房配管に適しています。甘い匂いがする事も特長です。
エチレングリコール系若干の毒性を有します。ただし苦味を付けておりますので、万一小さなお子様の口に入った場合でも、反射的に飲み込めないような工夫がされています。比較的安価で、粘度が低い事が特長なので、システム配管が長く大量に不凍液(ブライン)を必要とし、生活空間からは少し離れたロードヒーティングに適しています。また、最近では密閉式のセントラル暖房システム等にも採用される事もあります。 どちらも主成分であるグリコール自身は非常に揮発(蒸発)しにくい性質です。システムの水量が減る多くの要因(水量の減少速度が速い場合は配管漏れを疑ってください)は、希釈した水分が揮発した事によるものです。
このような場合には、配管中の不凍液(ブライン)濃度が高まっている可能性がありますので注意が必要です。また、不凍液(ブライン)は非常に浸透性が高く、溶剤的な性質がありますので、配管のネジ部のシールには水道用のものではなく、嫌気性のシール材を使用することを当店では強くお勧めしております。
日本には数多くの水質があります。不凍液(ブライン)を水道水等で希釈する場合、その希釈水の水質によって思わぬトラブルが発生する事があります。例えばお住まいの地域の水質にカルシウムイオンやマグネシウムイオンといったものの多い硬度成分が高い水質で希釈すると、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムといった化合物を形成し、スケール化の原因となり、熱交換が悪くなります。(ボイラーの性能低下)
またシリカ成分を含んだ水質で希釈すると、シリカスケールを形成し、これも同じように熱交換の低下を招きます。このようなトラブルを防止する為に、不純物を一切含有しない純水で希釈したノンウォーター不凍液が誕生しました。
本品は長寿命タイプですので、密閉配管システムの場合には、従来品の3倍の期間を交換の目安としてお使いいただく事が可能です。